Dec 28, 2011

代官山 蔦屋書店

かなり長いインターバルを置いた後の投稿になるので、いささかタイプする指先に緊張感が滲み出ている。見苦しい点は目を瞑って頂けたら幸いだ。

ここ1週間ほど、寒空の下、足しげく通っている場所がある。代官山の蔦屋書店だ。先日12/5にオープンしたばかりの出来たてホヤホヤの本屋さんだ。コンセプトは「大人のTSUTAYA」。これがまた日本では珍しいアメリカン・スタイルの書店なのである。

[ 蔦屋書店 ]
まず立地だが、これはおよそ便がいいとは言えない。駅から徒歩で約5分で、通常の書店とは傾向を異にしている。外観はまるで近代美術館だ。一見してとても書店とはわからないだろう。

しかし書店というだけあって、もちろん書籍全般は扱われている。3つの建物に別れているのだが、これがそれぞれの建物の1F部分。学生が読むようなコミックや参考書の類いは身を潜め、車、建築、アート、旅行、料理、文学といった商品が主として並んでいる。今や昔に流行った「平凡パンチ」や「明星」などの懐かしいものも見受けられる。

2F部分はこれまた蔦屋(TSUTAYA)というだけあって、DVDやCDのレンタル並びに販売をしていたりするのだ。従来の店舗では狭小なスペースしか設けられていなかったジャズやクラシックも豊富で、映画フロアではDVD化されていない映画をDVDにプレスして販売するようなサービスも行っていたりする。

各建物、各階、それぞれ異なるジャンルの書籍やその他関連製品が置かれているため、目当ての本がある場合には多少探すのにも一苦労ありそうに思えるが、そこはさすがに現代である。流行の先端、iPadが店内の至るところに設置してあり、店頭で限定的に使うことのできる「蔦屋書店」というアプリケーションで商品の検索もできるようになっているのだ。そのおかげで特定の商品を探すことも容易い。

店内には「ラウンジ」なるものや、スターバックスなどがあり、店内どこから持ってきた商品であっても、それを読みながらコーヒーやお酒を飲んだりすることもできる。いわば飲食ができる図書館といった様相だろう(何を隠そう、このせいで僕自身は長居をしてしまうのだ)。

そしてこれが最大の特徴なのだが、各分野ごとに「コンシェルジュ」と呼ばれる従業員が設けられている。専門誌の元編集長などであったりするのだが、特定分野に秀でたその道のプロが、奥行きのある知識で僕ら消費者にきめ細やかな接客を提供してくれるのである。

ね、ちょっと行ってみたくなったでしょ?

この事業、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ;TSUTAYAの親会社、という言い方で合っているのだろうか)からしてみると、かなりの大規模事業のようだ。このような思い切った投資に踏み切ることができた背景には、間違いなく今年3月に成立したMBOが背景にあるだろう。やんややんやと逐一水を差してくる外部環境がなくなったことで、大船に乗った気持ちで大胆に舵取りできるようになったのだ。と考えてみると、逆に株主って相当うるさいんだろうなーとも思うのだけれど(笑)

とはいえ、少なくともこの事業、表面的には的を射ていると個人的には感じている。そもそもCCCの主要顧客層はTSUTAYAに象徴されるように20〜30代の若者から中堅層にかけてだ。このままでは将来的なジリ貧は免れない。そこで40代以降のシニア消費者層をターゲッティングすることで、現在ちょうどそのターゲット年齢層にある消費者だけでなく、いま20〜30代の消費者が年を取った場合にも対応できるというわけである。まさに顧客変化に対応すべく事業ラインの拡張を図ってきたのだ。加えて、CCCあるいはTSUTAYAというコーポレート・ブランドに対するロイヤルティの向上にも繋がらんといっても過言ではないだろう。実際に行ってみるとわかるのだが、如何せん心地がいい。

しかしながら一方で、蔦屋書店という事業から収益を確保していこうとするのには、若干の陰りがあることもまた事実だろう。先にも述べたとおり、わざわざ買わなくても店内でいかようにも読むことができてしまう。したがって、この事業内における収益確保の焦点をどこに当てるのか、またこの事業の結果からどのようなベクトル調整をし、いわゆるプランBとしてどんな戦略を打ち出すのか、検討の余地は大いにあることだろう。今後の展開からまだまだ目を離せそうにはない。

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